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TAIWAN BOOKS 台灣好書『Aな夢』(鯨向海、及川茜訳、思潮社)

台北駐日経済文化代表処台湾文化センター発行、太台本屋 tai-tai books企画による「TAIWAN BOOKS 台灣好書」は、日本の皆さんにもっと台湾の本に触れていただきたいと願い、日本語で読める台湾作品の中から、特におすすめできる作品をピックアップしてご紹介しています。

「台湾大好きだけど、台湾作家の本は読んだことない。これから少し読んでみたい」「本を読むのは好きで、今まで読んだことない台湾の本を読んでみたい」「『歩道橋の魔術師』を読んで面白かったけど、次に何を読んだらいいかわからない」……と思っているみなさんのガイドとなれば幸いです。


『Aな夢』(鯨向海、及川茜訳、思潮社)

 精神科医でもある鯨向海の第五詩集『Aな夢』は、夜の闇の中からとろとろと朝方のシーツに流し出された純潔のような1冊。
ドラえもん(哆啦A夢)を連想させるタイトル同様、どこまでも軽快な詩句は幾重もの含羞に覆われながら、取り戻せない過去への悼みを滲ませる。「幸福の感覚はすごく痛くて/ぼくは夢の中の果樹園で純真に膨張をつづける」(「果物」)、「どうしよう/ひとり孤独にドライマンゴーをひと袋食べつくしてしまった」(「いくらかは誰かにもう聞かれただろうけど」)。
それは、固い鎧に身を覆ったような男性性に囲まれながらも、そこに融け込むことのできない悲哀だと見ることもできるだろう。鯨向海の詩が台湾の若い読者の心をつかむのは、親しみやすい言葉の選択に加え、溢れ出してはためらいがちに沁み入る液体のような優しさゆえかもしれない。
 


著 鯨向海(ジンシャンハ/Jing Xiang-Hai)

訳 及川茜

2018年 

思潮社

2,300円+税