呉明益 著/小栗山智 訳
KADOKAWA
ブッカー国際賞にノミネートされた『自転車泥棒』や『歩道橋の魔術師』などで知られる、台湾を代表する作家の一人、呉明益による長編小説。
気候変動の影響を受け始めている近未来の台湾。愛する息子と夫が行方不明となり、生きる希望を失った大学教授のアリスは、夫が遺した海辺の家で、偶然、子猫と出会い再び前を向きはじめた。一方、文明から隔絶されたワヨワヨ島で生まれた少年アトレは、次男追放の島の掟に従い、大海原に漕ぎ出すと、やがて太平洋に浮かぶ巨大なゴミの島に辿りつく。ある時、津波が押し寄せると、そのゴミの島は、アリスが暮らす海辺に衝突し、奇しくも二人は出会うことになるのだが──。
取り返しのつかない環境破壊によって生まれた災害と喪失を圧倒的なスケールで描き出し、自然および神話的世界と現実的社会の交差、超自然的存在と登場人物との関わりを通して、差し迫った現代の環境問題を読者に切実に語りかけたSF大作。本書が世界14か国で翻訳されていることを嬉しく思うとともに、一人でも多くの読者に届いてほしいと切に願う1冊です。