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TAIWAN BOOKS 台灣好書『いつもひとりだった、京都での日々』(宋欣穎、光吉さくら訳、早川書房)

 台北駐日経済文化代表処台湾文化センター発行、太台本屋 tai-tai books企画による「TAIWAN BOOKS 台灣好書」は、日本の皆さんにもっと台湾の本に触れていただきたいと願い、日本語で読める台湾作品の中から、特におすすめできる作品をピックアップしてご紹介しています。

 「台湾大好きだけど、台湾作家の本は読んだことない。これから少し読んでみたい」「本を読むのは好きで、今まで読んだことない台湾の本を読んでみたい」「『歩道橋の魔術師』を読んで面白かったけど、次に何を読んだらいいかわからない」……と思っているみなさんのガイドとなれば幸いです。


『いつもひとりだった、京都での日々』(宋欣穎、光吉さくら訳、早川書房) 

 201911月に日本で公開された、台湾の長編アニメーション『幸福路のチー』の宋欣穎監督によるエッセイ集。
2000年代半ばの2年間、京都大学大学院で映画理論を学ぶために滞在した京都で出会った人たちとの出来事を綴る。
いつも寂しげな下宿先のアパートの大家さん、アルバイトをするカラオケボックスに毎週ひとりでやってくるおじいさん、真っ赤な口紅をさす喫茶「クンパルシータ」のおばあさん、鹿王子と呼ばれる中国出身の留学生、そして同級生たち
。自身もひとり暮らしをする筆者の、どこか孤独の影を落とす彼らに向けたまなざしはやさしい。

 『幸福路のチー』での丁寧な人間描写と同じく、彼らはまるで短篇映画の主人公のように得も言われぬ魅力を放つ。そのみずみずしい筆致は素晴しく、一篇一篇が短篇小説のようでもある。


著 宋欣穎(ソン・シンイン/Sung Hsin-Yin)

訳 光吉さくら

2019年 

早川書房

1,700円+税