台北駐日経済文化代表処台湾文化センターは12月5日、アンスティチュ・フランセ日本(在日フランス大使館フランス文化センター)と共催で「今日の人権の普遍的価値に向けどのような挑戦がされているのか?~第40回国際人権連盟年次総会成果報告会~」を開催した。
同会は、今年10月に台湾で開催された第40回国際人権連盟年次総会に出席した国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ事務局長の伊藤和子氏、同性パートナーシップ・ネット共同代表の池田宏氏、認定NPO法人難民支援協会代表理事の石井えり氏ら3名の日本の人権問題専門家を招き、国際人権連盟総会に出席した感想や人権問題への取り組みの最新状況などを語った。同会では明治大学法学部教授の鈴木賢氏がモデレーターを務め、会場には人権問題に関心のある人々が約50名出席した。
同会には台北駐日経済文化代表処の謝長廷代表も出席し、開会の挨拶で、「台湾は戒厳令下の時代から人々の奮闘により困難を乗り越えてさまざまな人権を勝ち取ってきた」と述べ、「このたび国際人権連盟の総会がアジアで初めて開催され、その場所に台湾が選ばれたことは、台湾にとり極めて意義深いことである」と強調した。
アンスティチュ・フランセ日本 書籍・グローバル部門担当官 サラ・ヴァンディ主任は、今年の国際人権連盟の年次総会が台湾で開催されたことについての意義とその成果について説明した。
伊藤和子氏は、蔡英文総統が国際人権連盟の総会に出席した際に話したスピーチの内容から、台湾は人権問題を重視していることを感じることができたとの感想を語った。そして、台湾は国際的な人権組織に属しておらず、国際人権規約にも正式に調印ができないが、自主的に実践し、人権専門家を呼んで台湾における人権関連法規が国際基準に達しているかどうかをチェックしてもらって改善を進めているのに対し、日本は国際人権規約に加盟しているにもかかわらず、関心が低いためこの部分を台湾から学びたいとの認識を示した。
石川えり氏は、難民・移民の観点から見ると、普遍的な人権を守っていくための基準が世界的に引き下がっていると指摘し、「同じ人間」として共感を広げていくことが必要であり、これらの国境を越えて発生する人権問題は、国家間の連帯によってのみ解決できると強調した。また、今回の国際人権連盟総会の運営や計画が、台湾のNGO(非政府組織)と政府が緊密に協力しており、調整能力も極めて高く、現在台湾の立法院(国会)で審議されている難民法が成立すれば、日本にとっても参考になるとの考えを示した。
池田宏氏は、多くのセッションに共通して浮かび上がったこととして、グローバライゼーションが各国の経済に大きな影響を与えており、そこから取り残された人々が人権擁護に関わっている人に対してヘイト的アプローチで迫ってくると指摘し、人権擁護活動に携わる人は正当性の論拠を強化しなければならないとの考えを示した。また、台湾では2004年に成立した「ジェンダー平等教育法」が、同性結婚の合法化やLGBTなどの議論の基礎となっているのに対し、日本ではジェンダー平等に関する教育などが遅れているとの見方を示した。
最後に、モデレーターの鈴木賢氏は、アジアでも同性婚合法化が認められるという最良のモデルを台湾が作ってくれたと評価し、日本も台湾に続きたいとの考えを述べた。