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【台湾文学新刊紹介】 『神秘列車』

【台湾文学新刊紹介】 『神秘列車』

   1945年以降の台湾で、大きな時代のうねりに翻弄されながら生き抜いた家族の物語を、ストーリーテリングの名手が情感をこめて紡いだ傑作短篇集『神秘列車』が発売されました。


 


   1972年生まれの著者・甘耀明は数々の文学賞を受賞し、ノーベル賞作家の莫言に文才を賞賛された実力派。初の邦訳となる本書は、代表作に最新作を加えたオリジナル編集による〝ベスト版〟短篇小説集です。収録作品のほとんどは、著者の故郷、苗栗県が舞台になっています。


 


■収録作品■


「神秘列車」政治犯だった祖父が乗った〝神秘列車〟を探して少年は旅に出た。国民党による白色テロで離ればなれになった祖父と祖母の秘められた物語とは。


「伯公、妾を娶る」夜遊びをする土地の神様〝伯公〟を落ち着かせようと、村長たちは大陸から妾を娶るが……。グローバル化の波が押し寄せたことによる村人の変化や戸惑いをコミカルに描く。


「葬儀でのお話」祖父母、母の死を契機によみがえる、郷土の村に生きた家族の絆と命のかがやき。


「鹿を殺す」1970年代、花蓮。アミ族の二人組が小さな町にやってきた。かつて森林は先住民族が住む場所だった――。


 


 


作品ごとに異なるスタイルと多彩な表現により、〝千の顔をもつ作家〟と称され、テレビドラマ化されるなど、台湾でいま最も注目される作家の魅力を堪能できる一冊。


 


「私は日本の山河に、より一層の温もりと親しみを感じている。(……)日本の山河も、台湾の山河も、どれもみな人々の人生が映し出された美しい影である。だから私は、私のペンから生まれた台湾の物語を、日本の読者とともにわかちあえることを心からうれしく思う」――甘耀明


 


 


 


甘耀明(カン・ヤオミン)


Yao Ming Kan


1972年、台湾・苗栗県生まれ。台中の東海大学中国文学部卒業。苗栗の地方新聞の記者などをしながら小説を書きためていた。2002年「神秘列車」で寶島文学賞審査員賞、「伯公討妾(伯公、妾を娶る)」で聯合報短篇小説審査員賞を受賞するなど、発表した6篇が文学賞を続けて受賞し、これらの作品を収めた初の短篇小説集『神秘列車』を03年に刊行。「神秘列車」と「伯公討妾」はテレビドラマ化された。02年、東華大学大学院に進学し修士号を取得。05年、中短篇小説集『水鬼學校和失去媽媽的水獺』で「中國時報」開巻十大好書(年間ベストテン賞)、中篇小説「匪神」で呉濁流文学賞、06年「香豬」で林栄三文学賞受賞。09年、長篇小説『殺鬼(鬼殺し)』で「中國時報」開巻十大好書(年間ベストテン賞)、台北国際ブックフェア小説部門大賞、博客來(Books)華文創作最優秀賞などを受賞。10年『喪禮上的故事(葬儀でのお話)』を刊行し、大陸の『這世代』シリーズ(人民教育出版社)九冊の一つに選ばれた。155月に長篇『邦査女孩(アミ族の娘)』を刊行したばかりである。16年、『殺鬼(鬼殺し)』の邦訳を白水社より刊行予定。


 


 


●訳者略歴●


白水紀子(しろうず・のりこ)


1953年福岡県生まれ。東京大学大学院人文科学研究科(中国文学)修了。


横浜国立大学教授。国立台湾大学客員教授、北京日本学研究センター主任教授を歴任。


著書に『中国女性の20世紀』(明石書店)


訳書に陳雪『橋の上の子ども』(現代企画室)、陳玉彗『女神の島』(人文書院)など。