著 張 渝歌 Chang Yu-ko
訳 倉本知明
2021年8月 文藝春秋
張渝歌（ジャンユーグァ）は以前は医師であったが、2010年より主要な文学賞で作家としての頭角を現し始めた。作品は台湾文化部テレビ番組脚本創作長編佳作賞を受賞している。彼はその医学的背景からクライムストーリーの描写に長けており、「最も期待されている推理の新星」として知られている。
『ブラックノイズ』は仕事の状況が芳しくないタクシー運転手を主人公にストーリーが展開していく。運転手の妻には得体のしれない女の話し声が絶えず聞こえており、彼はそこからさまざまな奇妙な事件を経験していく。事件の調査に関わっていくうちに、彼は妻の状況が単独の出来事ではなく、歴史的な未解決事件にまで遡ることを知る。 『ブラックノイズ』は聴覚と視覚によってもたらされる恐怖を描写するだけでなく、台湾の歴史と心霊怪異譚を巧みに組み合わせ、未解決事件を解決する過程で、心理サスペンスと人生の浮き沈みを積み重ねながら物語を綴っていく。