新井一二三
筑摩選書
どのような時代に、どのような人が、どのような社会状況のなかで書いた本なのか。どのジャンルの本であっても、その時代を生きている人によって書かれたものである限りは、時代背景や社会状況の影響を受けないわけにはいかない。そういった意味で、本書は台湾で書かれた本を読むときにあらかじめおさえておきたいほとんど最低限といって差し支えのない情報が、歴史的な視点と、そこで暮らしている人の視点を交えながら、台湾でも活躍する日本人作家である著者の実感をともなった言葉で語られている。
オランダ、清朝、日本、そして中華民国と外からやってきた植民者によって統治された時代、世代間でことなる国語とアイデンティティ、そして学生運動から民主化へ。本書を読み台湾を知ることで、より解像度高く、台湾という特異な歴史を持つ国に生きる一人一人の物語が浮かび上がってくる。