台北駐日経済文化代表処台湾文化センター発行、太台本屋 tai-tai books企画による「TAIWAN BOOKS 台灣好書」は、日本の皆さんにもっと台湾の本に触れていただきたいと願い、日本語で読める台湾作品の中から、特におすすめできる作品をピックアップしてご紹介しています。
「台湾大好きだけど、台湾作家の本は読んだことない。これから少し読んでみたい」「本を読むのは好きで、今まで読んだことない台湾の本を読んでみたい」「『歩道橋の魔術師』を読んで面白かったけど、次に何を読んだらいいかわからない」……と思っているみなさんのガイドとなれば幸いです。
『台湾レトロ氷菓店』(ハリー・チェン、中村加代子訳、グラフィック社)
氷菓店(冰果室)とは、かき氷やアイス、果物、飲み物、軽食などを出す店のこと。台湾の人にとっては、子どもの頃から親しんでいる身近な存在で、時にデートや見合いの場にもなった。供されるのは、炭火で8時間煮こむトッピングや手刀で切る団子、粉から手作りの揚げパンなど、どれも手間暇がかけられ、店主のこだわりがつまったものばかり。
使われる道具もまたユニークだ。蒸気機関車のような存在感を放つ製氷機に、銅製のアイスクリームディッシャー、手描きの椀が、店の重ねてきた歳月を物語る。しかし時代の変化に抗い、看板を守り続けるのは大変だ。
著者はこの台湾ならではの食文化を記録したいという強い思いで、時間と競争するように、各地の氷菓店を旅する。店の有り様に、人びとの生活や街の風景が映される。著者の撮り下ろした写真も秀逸。
著 ハリー・チェン(Hally Chen)
訳 中村加代子
2019年
グラフィック社
1,700円+税