台北駐日経済文化代表処台湾文化センター発行、太台本屋 tai-tai books企画による「TAIWAN BOOKS 台灣好書」は、日本の皆さんにもっと台湾の本に触れていただきたいと願い、日本語で読める台湾作品の中から、特におすすめできる作品をピックアップしてご紹介しています。
「台湾大好きだけど、台湾作家の本は読んだことない。これから少し読んでみたい」「本を読むのは好きで、今まで読んだことない台湾の本を読んでみたい」「『歩道橋の魔術師』を読んで面白かったけど、次に何を読んだらいいかわからない」……と思っているみなさんのガイドとなれば幸いです。
『陳澄波を探して 消された台湾画家』(仮題)(柯宗明、栖来ひかり訳、岩波書店)
1984年、独裁政権下の台湾。ある晩、駆け出しの画家である阿政(あせい)の元を訪れたのは、古い絵の修復をねがう謎の依頼人だった。絵の作者さえ告げられずに困惑した阿政は、新聞記者でガールフレンドの方燕(ほうえん)と共に探索へと乗り出す。絵だけを手掛かりに芸術家らへの訪問を重ねるうち、作者は「陳澄波(ちんちょうは)」と判明する。
戦前、日本植民地下の台湾に生まれ東京で絵を学び、帝展にも入選した才能あふれる陳澄波。だが彼が死に至った経緯について誰もが口を閉ざす。次々と入れ替わる統治者のもとで抑圧を受け続けた台湾の人びとの哀しみを、悲劇の画家の生きざまに重ね、その死の謎を解き明かす。台湾近代絵画を代表する実在の画家・陳澄波の人生を紐解きながら、芸術とアイデンティティーをめぐって時をかける歴史ミステリー小説!
著 柯宗明
Ke Tsung-ming
訳 栖来ひかり
岩波書店
2021年夏 刊行予定
書影は原書のもの 提供:遠流出版