台北駐日経済文化代表処台湾文化センター発行、太台本屋 tai-tai books企画による「TAIWAN BOOKS 台灣好書」は、日本の皆さんにもっと台湾の本に触れていただきたいと願い、日本語で読める台湾作品の中から、特におすすめできる作品をピックアップしてご紹介しています。
「台湾大好きだけど、台湾作家の本は読んだことない。これから少し読んでみたい」「本を読むのは好きで、今まで読んだことない台湾の本を読んでみたい」「『歩道橋の魔術師』を読んで面白かったけど、次に何を読んだらいいかわからない」……と思っているみなさんのガイドとなれば幸いです。
『台北プライベートアイ』(仮題)(紀蔚然、舩山むつみ訳、文藝春秋)
台湾では交通信号の意味がほかの国とは違う。赤信号は「突っ込む準備をしろ」、緑は「そら、突っ込め」、黄色は「まだ突っ込まないのか、この馬鹿たれ!」という意味だ。台北の私立探偵が飲むのは、冷やしたマティーニでも、苦いウイスキーでもない。発泡スチロールのカップに入った出がらしの紅茶だ。
大学教授の地位を投げ出して、葬儀用品店街に私立探偵の看板を掲げた呉誠(ウーチョン)が出会うのは、事なかれ主義のぽっちゃり警官、政治を語り出すと止まらなくなる自動車修理工場の主人、仕事中に自分の妻を尾行してしまうタクシー運転手など、一癖も二癖もあるやつばかり。浮気調査かと思われた美しい人妻からの依頼は意外な方向に発展し、探偵はいつのまにか、恐ろしい連続殺人事件に巻き込まれる。ユーモアと毒舌の炸裂する台湾ミステリー。
著 紀蔚然
Chi Wei-Jan
訳 舩山むつみ
文藝春秋
2021年前半 刊行予定
書影は原書のもの 提供:印刻文學