台湾の彫塑家、黄土水氏による『山本悌二郎銅像』が台湾高雄市に里帰りすることになった。台北駐日経済文化代表処(以下、駐日代表処)の謝長廷代表は7月27日、新潟県佐渡市で行われた高雄市との友好交流協力覚書調印式に渡辺竜五・佐渡市長とともに出席し、台日友好と芸術交流の大切な瞬間に立ち会った。
『山本悌二郎銅像』はもともと日本統治時代の台湾・高雄に開設された橋仔頭製糖工場に設置され、戦後に佐渡市の真野公園に移設された。調印式で挨拶した謝・駐日代表は、駐日代表処と台湾文化センター、並びに佐渡在住の台湾出身舞踏家である若林素子さんの働きかけにより、佐渡市の同意を得て高雄市に「里帰り」することになった経緯を説明し、佐渡市の善意に感謝の意を表した。さらに、謝・駐日代表は、先日台湾の屏東県で蔡英文総統が自ら出席した「二峰圳」100周年記念式典に言及し、「二峰」とは山本悌二郎氏の「号」であり、台湾と日本の深い絆は、100年前に先人がまいた種によるものであることが分かると強調した。
佐渡市役所で歓迎を受ける謝長廷・駐日代表一行
渡辺市長は、佐渡出身の山本悌二郎氏が台湾の近代化に貢献できたことを誇りに思うと挨拶し、今回の銅像の帰台については市民の声にも耳を傾け、民意にしたがって佐渡の重要な文化資産を台湾への移設に応じたことを説明し、これを通して、今後の台日友好交流が深まり、末永くこの貴重な歴史の記憶が語り継がれることを期待した。
黄土水は台湾の近代における代表的な彫塑家で、台湾から初めて東京美術学校(東京藝術大学の前身)で学び、在学中の作品『蕃童(山童吹笛)』が台湾人で初めて帝国美術院展覧会(帝展)に入選した。その後も3回連続で帝展に入賞し、その作品は彫塑の技巧とともに濃厚な郷土愛が込められており、台日芸術文化界の新しい星として注目され、日本の皇室や政財界からも高く評価された。人物の彫像も多く依頼され、『山本悌二郎銅像』はそのうちの一つである。山本悌二郎氏は佐渡市出身の政治家で、農林大臣を務め、台湾製糖株式会社(台糖の前身)の設立に参画し、社長も務めたことから、台湾と深い縁がある。
佐渡市真野公園の黄土水作「山本悌二郎銅像」