いつの時代だって、詩を求める人はいる。
あの頃、彼らは文学の種を蒔き、詩という花を咲かせた。
ドキュメンタリー映画上映会
台湾文学の著名作家たちをテーマとした大好評のドキュメンタリーシリーズ『島の物語を紡ぐ者たち』(原題:他們在島嶼寫作)も、すでに台湾で13作を制作。今回は、楊牧(ヤン・ムー)を扱った『一篇の詩の完成に向かって』と、洛夫(ルオ・フ)を扱った『岸のない河』を日本で初上映します。このドキュメンタリーからは、二人の詩人の生き方だけでなく、それぞれの作家が人生をかけて書き出してきた台湾文学の軌跡を感じることができるでしょう。
コロナ感染拡大防止のために、今年当センターのリアルな講座がなかなか実施できない状況が続いています。また、当センター主催の映画上映会もオンラインで開催することになっております。皆様が台湾文化ロスにならないように、イベント開催制限緩和の最近の状況を踏まえて、今回展示、オンライン上映会だけではなく、4回のドキュメンタリー映画上映会を実施することが決まりました。今回は毎回30名の人数制限となっていますが、皆様ぜひお越しください。
詩を唇にのせる楊牧の美しい韻律のなかで、台湾文学の四季が立ち上がっていく。波風を共に乗り越えた教え子や作家仲間たちの言葉から、その確かな足跡が解き明かされる。幼少時代を過ごした花蓮、転換期を迎えたバークレー、遂にたどり着いた中央山脈…台湾に永遠の詩を残した人の深くて静かなる言語世界――。
2011年|台湾|カラー|75分
監督|溫知儀(ウェン・ジーイー)
出演|楊牧(ヤン・ムー)
原題|朝向一首詩的完成
製作・出品|目宿媒體 Fisfisa Media
日本語字幕|池田リリィ茜藍
監修協力|劉怡臻(リュウ・イージェン)
字幕制作|ホワイトライン
©2011 Fisfisa Media All Rights Reserved.
予告編
自身の日記と代表作『石室の死亡』の一文一句が、時空間を交差しながら全編を貫く。職業軍人として幾多の戦禍をくぐり抜け、数々の衝撃作を世に送り出した、華人文学界の“詩魔”。 批判を浴びながらも、怯まず死や時間と向き合い、狭い道をどこまでも突き進んで行った。果たして彼が目指した境地とは――。
2014|台湾|カラー|93分
監督|王婉柔(ワン・ワンロー)
出演|洛夫(ルオ・フ)
原題|無岸之河
製作・出品|目宿媒體 Fisfisa Media
日本語字幕|池田リリィ茜藍
監修協力|劉怡臻(リュウ・イージェン)
字幕制作|ホワイトライン
©2014 Fisfisa Media All Rights Reserved.
予告編
台湾文化センターでの上映スケジュール
日時 作品名 事前申し込み
10/8 19:00 楊牧『一篇の詩の完成に向かって』
※申し込みリンク:
https://peatix.com/event/1650481/view
10/9 19:00 洛夫『岸のない河』
※申し込みリンク:
https://peatix.com/event/1650491/view
日時 作品名 事前申し込み
10/22 15:00 楊牧『一篇の詩の完成に向かって』
https://peatix.com/event/1669494/view
10/23 15:00 洛夫『岸のない河』
https://peatix.com/event/1669515/view
※申し込み:10月13日(火曜)午前11:00より
※申し込みリンクは申し込み開始までに更新します。
※事前申し込みで、各日程先着30名様が無料でご参加いただけます。
※同じ方の複数申込みがありますと、他の方へ影響を及ぼします。複数のお申込みをした場合は. 当選取消しとなります。ご注意下さい。
オンライン上映のスケジュール
上映期間 作品名 事前申し込み
10/17~10/24 楊牧『一篇の詩の完成に向かって』
※申込受付中:https://seihinonline1017.peatix.com/
10/24~10/31 洛夫『岸のない河』
※申込:10月11日(日)より
※事前申し込みで、先着100名様が無料でご参加いただけます。
配信プラットフォームを参加決定者に個別にメールでお知らせします。ピーティックスよりお申し込み下さい。
作家原稿と作品展
10/7─10/30 台湾文化センター
10/7─11/15 誠品生活日本橋
時代を代表する二人の詩人楊牧と洛夫の生涯をたどりながら、手書き原稿(複製)を展示、作品創作の機微を感じることができます。展示する手書き原稿は、楊牧の「七月」「介殻虫」「自君之出矣」「武宿夜前後」「但丁」「形影神」「学院之樹」「兎」「俯視」、洛夫の「衆荷喧嘩」「無岸之河」「霊感及其他」「超現実主義的詩與禅」「致金斯堡」「夢是一盞燈」「漂木」「自伝」などです。
また希少価値のある旧版、翻訳書やその代表作なども展示いたします。楊牧、洛夫は共に、中学生の頃から詩の世界で活躍しており、晩年もその創作意欲が衰えることはありませんでした。これらの展示品は、まさに台湾現代詩を代表する詩人二人のルーツを知るためのタイムトンネルのようなものです。
スタンプラリー
楊牧、洛夫の詩から名文をチョイスしてスタンプを作りました。誠品生活日本橋と台湾文化センターにスタンプを設置、イベント期間中にこのパンフレット(台湾文化センター及び誠品生活日本橋のレジカウンターで配布)の最後の1ページをご利用いただき、四つのスタンプをすべて集めると、記念品の竹製しおりと交換できます。
※記念品の交換は、台湾文化センター、または誠品生活日本橋で行っております。
※数に限りがありますので、品切れの際はご容赦ください。
台湾の戦後世代を代表する詩人
楊牧(ヤン・ムー/Yang Mu)
1940-2020
「執筆は、本来的に不満のはけ口であってはならない。私自身、執筆で自分の憤りや悲しみを表現するべきだとも思わない。」──楊牧
台湾・花蓮生まれ。東海大学外国語文学科、アイオワ大学英語文学修士、カリフォルニア大学バークレー校比較文学博士。詩人、エッセイスト、翻訳者、そして学者というマルチな活躍で知られ、台湾文学界に多大な影響を及ぼしてきた。その作品は、イメージを重んじた洗練された言葉で表現されており、西洋の詩と中国古典の文学的技巧を合わせ持っている。また作品の音楽性も魅力的となっている。アイルランドの詩人・イェイツの影響を受け、ロマン主義をベースに、ヒューマニスティックな面も兼ね備えている。特に1972年にペンネームを「葉珊」から「楊牧」に変えてからは、社会への関心が強まった。出版された著作は60作以上で、国家文芸賞、呉三連文芸賞、ニューマン華語文学賞、スウェーデン・チカダ賞などを受賞、詩やエッセイは英語、韓国語、ドイツ語、フランス語、日本語、スウェーデン語、オランダ語などに翻訳されている。
「詩魔」と呼ばれる台湾現代詩の先駆者
洛夫(ルオ・フ/Lo Fu)
1928-2018
「私は創作をある種の実験だと常に考えている。いつか私はすべての創作を否定するかもしれない。」── 洛夫
中国・湖南省生まれ。1949年に国民党軍に入隊し、軍隊とともに台湾へ渡った。台湾南部の左営で海軍陸戦隊に配属された頃、詩人・瘂弦、張黙と創世紀詩社を創設した。詩人であり、評論家、エッセイスト、書道家でもある。18歳から詩を書き始め、人生が幕をおろす最期の時まで創作を続けた。その道のりは、まさに台湾現代詩の歴史を体現している。戦時下にあった初期は、シュルレアリスムの影響を受け、強烈なイメージ、奇妙で冷淡な言語が特徴的だった。表現方法はファンタスティックで魔術的だったため、「詩魔」と称された。晩年は次第に恬淡としたスタイルへと変化、特に人生に対する思惟を重んじるようになった。73歳の時に三千行の長詩『漂木』を出版し、同年には台湾現代十大詩人の一人に選ばれた。呉三連文芸賞、国家文芸賞などを受賞。作品は英語、フランス語、日本語、韓国語、オランダ語、スウェーデン語などに翻訳されている。
邦訳のある作品
『カッコウアザミの歌―楊牧詩集』
楊牧 著 上田哲二 編訳
ISBN:9784783728658
出版社:思潮社
出版日:2006/4/1
台湾の戦後世代を代表する詩人・楊牧の初の邦訳選詩集。1956~2000年前後の計70作を収録、5つのパートからなり、『山海風雨』からエッセイ「詩的端緒」も収録。高校時代から葉珊というペンネームで創作を始めた時期にはあざやかなイメージとロマンあふれる表現が見られ、中期から後期にかけては、古典と現代が融合し抒情性と批判精神が共存するようになった。いずれもその時代の風景を表現したものとなっている。
『禅の味―洛夫詩集』
洛夫 著 松浦恆雄 編訳
ISBN:9784783728955
出版社:思潮社
出版日:2012/1/1
台湾モダニズム詩人の双璧として、台湾詩を牽引してきた詩人洛夫の長年にわたる創作活動から64作を収録、第1~3部は年代順、第4部はカナダへの移民後に創作した長詩である。1950年代から2010年までの洛夫の創作の歩みをなぞりながら、「魔はすなわち禅」、「禅はすなわち魔」という洛夫詩の美学がじっくりと味わえ、さらに20世紀半ば以降の台湾現代詩の全体像も見いだすことができる。
『奇莱前書―ある台湾詩人の回想』
楊牧 著 上田哲二 訳
ISBN:9784783728764
出版社:思潮社
出版日:2008/1/1
台湾文壇で最も崇拝されてきた楊牧の自伝的エッセイ。「山風海雨」、「方向、零に帰す」、「昔我往きしとき」の3部から構成されている。前半部分では5歳から高校までを取り上げ、詩人のまなざしで花蓮、そして山や森林、野原、海を描いた作品が収録され、まさに楊牧の世界の原点を知るための必読の書と言える。
共催:
台北駐日経済文化代表処台湾文化センター