ムーン・リー、ジニョン、エディソン・ソンの共演も話題! 1970年代の中壢を舞台にした、青春映画『あの写真の私たち』 台湾を代表するプロデューサー フィル・タン監督オンライントークイベント開催‼
台湾駐日本代表処台湾文化センターと、グローバル社会を支える「新しい人文学」の構築を目指す大阪大学大学院人文学研究科 による連携企画として、映画『あの写真の私たち』上映会が5月30日(土)に大阪大学大阪大学会館講堂にて開催された。上映後に、フィル・タン(湯昇榮)監督がオンラインで登壇し、トークイベントが行われた。
『あの写真の私たち』は、ドラマ「悪との距離」「茶金 ゴールドリーフ」など数々のヒット作を手がけてきたプロデューサー のフィル・タンと、新鋭監督フランク・チェンによる共同監督作品だ。韓国版『あの頃、君を追いかけた』(邦題『あの夏、僕たちが好きだったソナへ』)で主演を務めたジニョンが本作で台湾映画初出演を果たしたのも話題になった。物語は1977年に起きた「中壢事件」(1977年に台湾桃園県長選挙の投票過程での国民党の不正行為に反発した中壢市民多数が市内の警察分局を包囲、焼き打ちにした事件。)を背景に展開し、「茶金 ゴールドリーフ」制作チームが参加し、精緻でリアルな VFX によって過去の街並みや出来事を再現している。
写真館の娘・賢英のそばには、いつも幼馴染の弘国がいた。ディスレクシアの彼女を支え、いつもふたりは一緒にいた。しかし彼 女の心を惹きつけたのは、救国団の招きで台湾に来た韓国のテコンドーコーチ・金だった。やがて県長選挙を巡り、激しい抗議活動が起き、彼らもその嵐に巻き込まれていく…。

登壇者:フィル・タン監督
写真がつなぐ記憶と笑顔― “忘れられた歴史”を映画に刻んだ、フィル・タン監督の思い
「こんにちは!オオサカ!!」と満面の笑みでフィル・タン監督がスクリーンに登場すると、会場から大きな拍手が起きた。「大阪が大好き、 今回は会場に行くことができず、本当に残念です」と、会場の観客に話しかけた。 キュレーターのリム・カーワイが、映画の背景になった中壢事件は台湾でもあまり知られていないと話すと、「私自身が客家人で、客家の文 化や物語に興味を持っています。舞台となった中壢も客家人が多く住んでいます。中壢事件はあまり知られていない事件ですが、台湾の民 主化にとっては大変重要な事件ですので、本作でこのテーマに挑もうとしました。」と、フィル監督がこの事件に興味を持った経緯を話した。 しかし当時の資料がほぼ残されていなかったため、「当時の写真が残されていたら、人々の記憶にもっと残っていたのではないか」と思い、 フィールドワークの中、写真館で現像の仕事に就いていた女性がいたこともあり、主人公を写真館の娘に設定したのだと語った。 フィールドワークはかなり長い時間行われ、当初予定していた監督はスケジュールが合わなくなってしまったという。その中で、フィールド ワークに立ち会い、中壢事件についても詳しくなっていたフィル監督自身が監督をすることになった。「フィル監督は大ヒットドラマ「悪との 距離」「茶金 ゴールドリーフ」はじめ、台湾を代表するプロデューサーで、初監督作品に挑んだことは大きな話題だった。」と、リムが語ると、「今日はトークイベントに参加できませんでしたが、共同監督のフランク・チェン監督とは、とてもいい感じでコ ラボレーションすることができ、スムーズに分業することができました。そして主人公の3人も含め、みんな一緒にあの笑顔を作 り上げることができたと感じています。」とフィル監督がチームワークがあったからこそ、素晴らしい作品を作りあげられたと語った。 本作は韓国版『あの頃、君を追いかけた』(邦題『あの夏、僕たちが好きだったソナへ』)で主演を務めたジニョンが本作で台 湾映画初出演したことも話題だ。会場にも多くのジニョンファンが参加していた。「1970年代、台湾にはテコンドー道場が多く ありました。また 1977 年に台湾ではじめての3D映画が作られ、その主人公は韓国人の俳優で、大統領のボディーガードでした。 そこからインスピレーションを得て、李コーチのキャラクターを作りました。」と、ジニョン演じる李コーチの背景が語られた。どうやってジニョンにキャスティングが決まったのかを問われると、「政治的な事件を背景にしていることもあり、韓国の俳優さ ん何人かには断られました。その中でジニョンが興味を持ってくれ、フィル監督は「脚本を5回読み、5回泣いた」と語っていた ことを明かし、ジニョンが強い思いを持って本作に参加したことを紹介した。

大阪大学 台湾映画上映会
本作の重要なモチーフである“写真”についても話題が及んだ。フィル監督は、「“写真”という言葉は、客家語、日本語、韓 国語で、当時は同じ“シャシン”という発音だったんです」と説明した。「客家の賢英、韓国人の李、様々な背景を持つ主人公た ちにとってこの“写真”はとても重要な共通点になっています。」と、フィル監督が語った。「主人公たち3人は一緒に笑顔でい ることができなかった。でも彼らはずっと笑顔で一緒にいるんだという気持ちで、最後の写真の中で彼らは笑顔で並んでいたんで す。」と、フィル監督が本作の重要なテーマである写真に込めた思いを述べた。会場からは、「映画では台湾と韓国の民主化運動が描かれていましたが、両国の共通点や違いについてどう考えていますか」という質問も寄せられた。フィル監督は、「1970~80年代、台湾と韓国はいずれも民主化運動と近代化を経験しました。違いはありますが、そうした 歴史があったことを映画を通して知ってほしい」と語った。これを受けてリムは、「当時の台湾も韓国もアメリカ文化の影響を強く受けていま した。弘国がフォークソングを歌う場面などにも、その時代性が表れています」と指摘。さらに、「歴史的事実を丁寧に描きながら、青春や恋 愛を織り交ぜてエンターテインメント作品として成立させている点が本作の大きな魅力」と語った。最後に台湾映画の魅力について問われると、フィル監督は、「エンターテインメント作品を通して歴史や文化、政治を伝えることは大切だと思っています」と語った。そして、「『あの写真の私たち』を観て、その背景にある歴史や文化をもっと知りたいと思ってもらえたらうれしい」と続けた。さらに、「何よりも、映画を通して“笑顔”を生み出せたら」と微笑む。最後に、「これからも台湾映画を世界に広めていきたい」 という言葉でトークを締めくくると、会場からは大きな拍手が送られた。

フィル・タン監督×リム・カーワイ(『台湾映画上映会2026』キュレーター・映画監督)