季節の行事や冠婚葬祭を彩ってきた装飾的な切り絵――剪花(ジェンホア)。「馬祖剪花」とは、19世紀に馬祖列島(ばそれっとう)へ渡った移民たちが、厳しい海風と過酷な生活環境のなかで根を張り、育んできた民芸のひとつです。台湾本島から離れた島の暮らしに深く根ざし、その豊かな生命力を今に伝えています。
本展では、劉英嬌.邱蓮嬌.劉嫩妹.李賽金.陳銀銀.陳梳金.陳賽嬌.林春蓮.陳英梅の9名の伝承者が手がけた伝統的な剪花と、その現代的な展開を試みる陳治旭(チェン ジー シュウ)の作品を紹介します。祭事の「歳時祭儀」と密接に結びついた馬祖列島の剪花は、素朴でありながらも、精緻で多彩な図様を生み出してきました。また、アーティストの陳は、フィールドワークをもとに、平面の剪花を立体作品へと展開しています。灯籠にあたる「風灯(フォン デン)」の再解釈から、文字をモチーフにしたインスタレーションに至るまで、島の記憶を今に翻訳しながら、剪花に宿る伝統美を現代の表現としてひらいています。
世代を超えて受け継がれてきた伝統と、新たなアートの文脈への接続を通して、日本の皆さまに馬祖剪花ならではの魅力をお届けします。台湾の離島群に息づく工芸が、垣根を越えた対話のなかで、いま新たなかたちとして綻ぶ姿をぜひご高覧ください。
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【開催概要】
■会場:台湾文化センター(東京都港区虎ノ門1-1-12 2階)
■会期:2026年6月2日(火)~2026年7月17日(金)
■時間:10:00~17:00(土日祝閉館)
■入場:無料
■主催:台湾文化センター
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馬祖剪花(マー ズー ジェン ホア)とは
馬祖では、切り絵を一般的な剪紙(ジエンジー)ではなく、剪花(ジェンホア)と呼びます。剪花こそ、島の生活に深く根ざし、女性たちの手によって受け継がれてきた営みなのです。
馬祖剪花は、島に生きる人々の暮らしや歳時と深く結びついてきました。最も重要な年中行事である擺暝(ベイマン)(元宵節)では、剪花で飾られ平安や吉祥を象徴する灯籠の「風灯(フォンデン)」が、人々の願いを灯してきました。また、台所の守り神の「灶神(そうしん)」を祀る儀式で用いられる「香炉花(シャンルー ホア)」から、人生の終わりを弔う葬儀に至るまで、剪花は島民の祈りや哀惜の心を表してきたのです。
また、図案には魚やエビ、蟹などの海の幸が数多く用いられ、海とともに生きる馬祖ならではの暮らしの風景を今に伝えています。
しかし、生活様式の西洋化や伝承者の高齢化に伴い、伝統的な剪花の技法は次第に失われつつあります。人生の節目に行われる儀礼や歳時のさまざまな場面で用いられてきた剪花は、台湾本島とは異なる文化のありようを今に伝えており、その伝統の美は、いっそう稀有な価値を帯びています。